書籍・雑誌

「鍵のない夢を見る/辻村深月」

平凡な日常を送っていた筈なのに、ふとした事から犯罪を犯してしまった人や、巻き込まれてしまった人を描いた短編集。

どのお話に出て来る登場人物にもあまり好感が持てなくて、嫌な気持ちになるのですが、よくニュースで耳にするような犯罪ばかりなのです。
もしかしたら、自分の身にも起こるかもしれないと思うような。

特に私の心に残ったのは最後の「君本家の誘拐」。

大型ショッピングモールで買い物をしていた良枝は、ふっと横を見るとベビーカーがないことに気付く。
店内を必死で探し回るが、ベビーカーは見つからない。

実家が地方の良枝は、毎日仕事で遅い夫が帰って来るまで子どもと二人きり。
夜泣きで満足に睡眠も取れず、買い物もゆっくり出来ない。
そんな中で、良枝は次第に精神的に追い詰められていく・・・。

私には子どもはいませんが、実家が遠い友達は子育ても大変そうだなと思っていたので、身近な話に思えました。

一つの事に囚われると周りが見えなくなってしまう良枝の危うさも、誰にでも置き換えられそうです。

「左京区恋月橋渡ル/瀧羽麻子」

京都の大学院でエネルギーの研究をしている山根は、ある日下鴨神社で美しい女性に一目惚れしました。
偶然彼女に再会した山根は、彼女をお茶に誘います。
学生寮の仲間や友達の彼女に心配されながら、山根は彼女を想い続けるのですが・・・。

「左京区七夕通東入ル」は京都で学生生活を送る花と理系男子・龍彦の恋愛が描かれていましたが、今回は龍彦の友達の山根くんの恋愛のお話です。

山根くんにとっては初めての恋で、戸惑ってばかりなのですが、その様子があんまり一生懸命で純粋だから、読みながら応援したくなってしまいます。
恋のお相手・美月さんも山根くんといる時間が楽しそうで、お似合いだなーなんて思ったり。

でも、初恋なので・・・後半はいろいろな事があります。
いろいろあるけど、読み終わって、何かすごく良かったなって思えます。
山根くんは、きっと素敵な男性になっていくと思います。

花が教えてくれる京都のデート・スポットも行ってみたくなります。
美味しいランチやカフェ、雑貨や絵本屋さんなどなど。

次は安藤くんの話かな。
あんまり恋愛と結び付かないけど(笑)

「空飛ぶ広報室/有川浩」

空井は子どもの頃から憧れていたブルーインパルスに入る為、航空自衛隊に入隊した。五年後、その夢は不慮の事故で突如として断たれた。
そして、防衛省-航空自衛隊航空幕僚監部広報室に勤務することになった。

自衛隊に偏見を持つ帝都テレビのディレクター・稲葉リカや、ミーハーな広報室長・鷺坂を初めとする広報室のメンバーがそれぞれ個性的で面白いです。

リカに自衛隊を理解してもらう事が広報の仕事に繋がると、気持ちを立て直した空井を見て、リカもまた記者が第一志望だったのにという想いから抜け出そうとしていく。
二人の成長を見守る気分で読みました。

ある騒動で二人が行き違ってしまった話では泣いちゃいました。
お互いに想いはあるのに、気の長い二人だなーとせっかちな私は呆れる場面もありましたが(笑)

有川さんの作品は、テンポが良くて読みやすいです。
この後どうなるんだろうと思うとなかなか読むのを中断できず、分厚い本でしたが一気に読んでしまいました。

自衛隊の事はあまり詳しく知らなかったけど、震災の時のドキュメンタリーをいくつか見て、こんなに一生懸命やってくれているんだなって感動してました。
だから、最後の物語を読んで、ぐっとくるものがありました。

有川さんの他の自衛隊ものも読みたいなと思っています。

「ビブリア古書堂の事件手帖/三上延」

「ビブリア古書堂の事件手帳~栞子さんと奇妙な客人たち~」
大輔は、小さい頃のある体験から本が読めない体質なのだが、ひょんな事からビブリア古書堂の店員になる。
ビブリア古書堂の店主である栞子は入院中で、内気で極度の人見知りだが、本のことになると別人のようになる。
非常に頭の回転が速く、大輔に聞いた話の幾つかの事柄から客の持ち込む謎と秘密を解き明かしてしまう。

大輔と栞子がどうなっていくのかなとか、せどり屋の志田や客として現れた夫婦など、温かい気持ちになる登場人物達が魅力的です。

そんな雰囲気とはうって変わって、第四話『晩年』は太宰治の署名入りの初版本を巡っての事件で、どんな事をしても手に入れようとする犯人が恐ろしかったです。
いくら本が好きでも、私は本に対する所有欲はあまり無いので、大輔と同じように「そこまでして・・・」と思ってしまいました。

私は古書については疎いので、作品の中で「せどり屋」や「アンカット」などの用語を知るのも面白かったです。

2、3巻と続いているので、読むのが楽しみです。

「マリアビートル/伊坂幸太郎」

アル中の元殺し屋・木村は、幼い息子に重傷を負わせた中学生「王子」に復讐する為、東北新幹線はやてに乗り込む。
殺し屋・蜜柑と檸檬は、闇業界では有名な峰岸の息子を誘拐現場から助け出し、身代金と共に盛岡まで行く途中だ。
不運を呼び寄せる殺し屋・七尾は、蜜柑と檸檬が持つトランクを強奪することを依頼され、トランクを奪って上野で降りるつもりだったのだが・・・。
「グラスホッパー」に続く殺し屋の話。

「グラスホッパー」はかなり前に読んだのですが、うろ覚えでした。
読んでいなくても十分面白いですが、登場人物がリンクしているので、読んでからの方がより楽しめるかもしれません。

それにしても物騒な新幹線です(笑)
絶対乗りたくないですね。

狭い新幹線の中で殺し屋同士が追ったり追われたり、対決したり、とにかくハラハラ、ドキドキです。
新幹線の中にそんな場所があるなんて、という驚きもあります。

悪意の申し子のような「王子」が嫌~な感じなのですが、現実にはいて欲しくないですね。
しかも、天使のような微笑みを持つ中学生なのですから、始末が悪いです。
どんな家庭に育ったらこんな子どもになってしまうんだろうと思ってしまいます。

数々の不運に見舞われながら、恐ろしく回転の速い頭脳でその場を乗り切る七尾には、本当にハラハラさせられました。
伊坂さんの本の主人公はすっごく弱そうで、とんでもない事件に巻き込まれていくんだけど、何とかしてしまうというのが多いですね。

登場人物の殆どが殺し屋ですが、それぞれのキャラクターが面白くて、憎めなくて、死んでしまう場面ではちょっと悲しくなってしまいます。

お勧めの本です。

「三匹のおっさん ふたたび/有川浩」

「三匹のおっさん」の続編です。
定年退職後、近所のゲーセンに再就職した剣道の達人キヨ、柔道家で居酒屋「酔いどれ鯨」の元亭主シゲ、機械をいじらせたら無敵の頭脳派、工場経営者ノリのおなじみの三人が活躍。

今回はキヨの息子の嫁・貴子のパート先での話や、ノリの再婚話を巡って早苗が情緒不安定になったり、シゲの息子・康生が地元の祭りの再開の為にキヨの息子・健児を頼ったりと、三人の家族の話が描かれていて、前作とはまた違った登場人物達の姿が面白かったです。

不良ぶった少年達の犯罪にも三人は心を痛めたり。
昔とは違って、今は地域の大人と子どものつながりが本当に希薄になっているのは考えさせられました。
大人や老人のモラルの低下についても、あるあると思ったり。

今回は三人のアクション場面はあまりありませんでしたが、またこの三人に会いたいです。

「コンカツ?/石田衣良」

智香は自動車メーカーに勤務する29歳。海外赴任中で留守の叔父の家に、大学時代から同級生の彩野、先輩の沙都子、後輩の結有とハウスシェアをして住んでいる。
毎週末合コンで彼を探す4人だったが・・・。

智香以外の3人は次々と彼が出来たり、妊娠したり、とんとん拍子なのだけど、智香の恋愛が動くのは終盤から。

でも、智香は容姿にも恵まれているし、仕事は一流企業の総合職だし、何だかんだ言って恋愛のチャンスもたくさんありそうだし、ちょっと感情移入できなかったです。

智香の周りにいる大学時代の友達(派遣社員)や、一般職の同僚の方に共感してしまいました。

男性が書いたとは思えないほど、女性の生態(?)を分かっていらっしゃるところは、さすが石田さんですが(笑)
本当はもっと女性同士はライバル意識もあると思うけど、この4人みたいな関係があったら楽しそうだなと思います。

「コンカツ?」と”?”が付いているように、智香はまだ結婚したいというよりも、恋愛がしたい女性なんですね。
好ましい条件が揃っていても、それだけでは好きになれないし、恋愛も結婚も不思議ですよね。

智香の両親の離婚にまつわる話の方が衝撃的だったかも。
離婚が決まった後のお母さんの彼探しとかも驚きでした。

「気分上々/森絵都」

バラエティに富んだ短編集だなと思いながら読んだのですが、あちこちで発表した短編を一冊にまとめたものなんですね。
それぞれに「お題」があったそうで、それはあとがきに書いてありますが、読んでみるとなるほどなという感じです。

私が一番好きなのは「ブレノワール」。
以前、「チーズと塩と豆と」という女性作家四人の短編集で読んでいたのですが、やっぱり良いなと思いました。



(ネタバレあり)

ブルターニュ地方で育ったジャンは、古くからのしきたりや言い伝えに囚われた生活から逃げ出すように、パティシエを目指して都会で働くようになる。
ジャンは成功してパリの二つ星レストランでシェフを務めるようになったが、母の危篤の知らせで帰郷する。
意識を取り戻した母と言葉を交わすが、心はすれ違ったままだった・・・。

母の死後、ジャンは良き理解者であるサラと出会いますが、彼女もブルターニュ出身でした。
二人は故郷に戻って、ターブル・ドット(食事付きの小さな民宿)をやろうと長い時間をかけて準備します。

そして、母がこだわり続けたしょっぱいクレープ<ガレット>を作る為に、黒麦畑を探すのですが、そこで母の自分への本当の想いを知るのです。

頑固で厳しく、頑なに古いしきたりや言い伝えを守り続けた母でしたが、全てはジャンの為だったと知った時は、心が熱くなりました。

面白い短編集って、なかなか無いですよね。
短編って難しいと思います。
でも、森さんの短編集は外れがないです。

「別冊 図書館戦争Ⅱ/有川浩」

遂にシリーズ最終巻です。
早く読みたいような、読み終わりたくないような複雑な気持ちで読み始めました。

「もしもタイムマシンがあったら」は、緒形の若き日の恋愛について。
彼女の気持ちも分かるけど、やっぱり早く言わなくちゃと思いながら言えない事ってありますよね。
それが大事なことであればあるほど。
でも、ちゃんと二人の恋の行方も描かれていたので、ほっとしました。

「昔の話を聞かせて」は、郁が篤に「新米だった頃の話を聞きたい」と言って、篤と小牧の若かりし頃の失敗などが語られます。
郁に似た直情型の篤も格好良いです。
ハラハラしますけどね。

「背中合わせの二人」は、柴崎と手塚が主役です。
柴崎がやっかいなストーカーに付きまとわれ、それがきっかけで手塚との距離が少し縮まるのですが、その直後に新たなストーカーが現れ・・・。
最後の最後でひやひやさせますね~。

犯人の言ってる事もやってる事も全く理解出来ないのですが、こんな人いるんだろうな・・・と思うと怖くなります。

そのまま終わらなくて良かったですよ。
何か人の悪意に当てられて、重いものが残っちゃったかも。
有川さんのご主人のおかげですね。
素直になった柴崎がとっても可愛くて、幸せそうで、本当に良かったです。

いつか図書隊のその後の話も読みたいです。
郁達じゃなくて、次の世代が主役でも面白いかもしれません。

「三匹のおっさん/有川浩」

還暦を過ぎても「おじいさん」と呼ばれたくない、まだ何か自分達にも何かできるのではないかと私設自警団を始めた三匹のおっさん。
定年退職後、ゲームセンターに再就職した剣道の達人キヨ、息子に居酒屋「酔いどれ鯨」を譲った柔道家シゲ、一人娘と二人暮らしの工場経営者で機械をいじらせたら無敵の頭脳派ノリ。
この三人にキヨの孫の祐希が絡んで、様々な事件を解決していきます。

とにかく登場人物のキャラクターが良いですね。
キヨの頼りない息子夫婦を反面教師にした孫の祐希は意外としっかり者で、最初はお互いに言葉が通じないような世代間の隔たりを感じていたのに、だんだんと心を通わせていく様子が微笑ましいです。
祐希のアドバイスで、キヨもおしゃれになったり。

祐希とノリの一人娘・早苗がお互いに好意を抱くようになるのですが、これも可愛らしいです。

町で起こる事件は、詐欺、痴漢、動物虐待、催眠商法等、身近に起こりそうな事件ばかり。
キヨとシゲの武術とノリの頭脳で解決していく様は見事で鮮やかです。
悪人は徹底的にやっつけ、被害者には温かい気遣いを忘れないのもいいところです。

続編が出たばかりなので、読むのが楽しみです。

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