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2012年7月

「マリアビートル/伊坂幸太郎」

アル中の元殺し屋・木村は、幼い息子に重傷を負わせた中学生「王子」に復讐する為、東北新幹線はやてに乗り込む。
殺し屋・蜜柑と檸檬は、闇業界では有名な峰岸の息子を誘拐現場から助け出し、身代金と共に盛岡まで行く途中だ。
不運を呼び寄せる殺し屋・七尾は、蜜柑と檸檬が持つトランクを強奪することを依頼され、トランクを奪って上野で降りるつもりだったのだが・・・。
「グラスホッパー」に続く殺し屋の話。

「グラスホッパー」はかなり前に読んだのですが、うろ覚えでした。
読んでいなくても十分面白いですが、登場人物がリンクしているので、読んでからの方がより楽しめるかもしれません。

それにしても物騒な新幹線です(笑)
絶対乗りたくないですね。

狭い新幹線の中で殺し屋同士が追ったり追われたり、対決したり、とにかくハラハラ、ドキドキです。
新幹線の中にそんな場所があるなんて、という驚きもあります。

悪意の申し子のような「王子」が嫌~な感じなのですが、現実にはいて欲しくないですね。
しかも、天使のような微笑みを持つ中学生なのですから、始末が悪いです。
どんな家庭に育ったらこんな子どもになってしまうんだろうと思ってしまいます。

数々の不運に見舞われながら、恐ろしく回転の速い頭脳でその場を乗り切る七尾には、本当にハラハラさせられました。
伊坂さんの本の主人公はすっごく弱そうで、とんでもない事件に巻き込まれていくんだけど、何とかしてしまうというのが多いですね。

登場人物の殆どが殺し屋ですが、それぞれのキャラクターが面白くて、憎めなくて、死んでしまう場面ではちょっと悲しくなってしまいます。

お勧めの本です。

「千に砕け散る空の星」観劇

後3週間で世界が終ってしまう。終末が近づく中、ある家族の確執や軋轢を描いた物語。

最初は淡々と進む物語に入り込めないでいたのですが、だんだん家族の歴史が分かって来て、いつしか惹き込まれていました。

キャストの方々が上手いので、難しい戯曲でもちゃんと伝わってくるのでしょうね。

中でも安藤サクラさんの存在感はすごかったです。

文学座の中村さんや倉野さんのお芝居が久し振りに観られたのも嬉しかったです。
お二人の演技を観て、やっぱりたまには文学座のお芝居も観に行かなくてはと思いました。

若手の男性陣はイケメンばかりで、それも楽しかったです(笑)

この戯曲は3人の作家が書いたそうなのですが、どういう風に書いたのでしょう。
2人なら想像がつくけど、3人だとまとめるのも大変そうですが、面白いかもしれませんね。

「三匹のおっさん ふたたび/有川浩」

「三匹のおっさん」の続編です。
定年退職後、近所のゲーセンに再就職した剣道の達人キヨ、柔道家で居酒屋「酔いどれ鯨」の元亭主シゲ、機械をいじらせたら無敵の頭脳派、工場経営者ノリのおなじみの三人が活躍。

今回はキヨの息子の嫁・貴子のパート先での話や、ノリの再婚話を巡って早苗が情緒不安定になったり、シゲの息子・康生が地元の祭りの再開の為にキヨの息子・健児を頼ったりと、三人の家族の話が描かれていて、前作とはまた違った登場人物達の姿が面白かったです。

不良ぶった少年達の犯罪にも三人は心を痛めたり。
昔とは違って、今は地域の大人と子どものつながりが本当に希薄になっているのは考えさせられました。
大人や老人のモラルの低下についても、あるあると思ったり。

今回は三人のアクション場面はあまりありませんでしたが、またこの三人に会いたいです。

「コンカツ?/石田衣良」

智香は自動車メーカーに勤務する29歳。海外赴任中で留守の叔父の家に、大学時代から同級生の彩野、先輩の沙都子、後輩の結有とハウスシェアをして住んでいる。
毎週末合コンで彼を探す4人だったが・・・。

智香以外の3人は次々と彼が出来たり、妊娠したり、とんとん拍子なのだけど、智香の恋愛が動くのは終盤から。

でも、智香は容姿にも恵まれているし、仕事は一流企業の総合職だし、何だかんだ言って恋愛のチャンスもたくさんありそうだし、ちょっと感情移入できなかったです。

智香の周りにいる大学時代の友達(派遣社員)や、一般職の同僚の方に共感してしまいました。

男性が書いたとは思えないほど、女性の生態(?)を分かっていらっしゃるところは、さすが石田さんですが(笑)
本当はもっと女性同士はライバル意識もあると思うけど、この4人みたいな関係があったら楽しそうだなと思います。

「コンカツ?」と”?”が付いているように、智香はまだ結婚したいというよりも、恋愛がしたい女性なんですね。
好ましい条件が揃っていても、それだけでは好きになれないし、恋愛も結婚も不思議ですよね。

智香の両親の離婚にまつわる話の方が衝撃的だったかも。
離婚が決まった後のお母さんの彼探しとかも驚きでした。

「気分上々/森絵都」

バラエティに富んだ短編集だなと思いながら読んだのですが、あちこちで発表した短編を一冊にまとめたものなんですね。
それぞれに「お題」があったそうで、それはあとがきに書いてありますが、読んでみるとなるほどなという感じです。

私が一番好きなのは「ブレノワール」。
以前、「チーズと塩と豆と」という女性作家四人の短編集で読んでいたのですが、やっぱり良いなと思いました。



(ネタバレあり)

ブルターニュ地方で育ったジャンは、古くからのしきたりや言い伝えに囚われた生活から逃げ出すように、パティシエを目指して都会で働くようになる。
ジャンは成功してパリの二つ星レストランでシェフを務めるようになったが、母の危篤の知らせで帰郷する。
意識を取り戻した母と言葉を交わすが、心はすれ違ったままだった・・・。

母の死後、ジャンは良き理解者であるサラと出会いますが、彼女もブルターニュ出身でした。
二人は故郷に戻って、ターブル・ドット(食事付きの小さな民宿)をやろうと長い時間をかけて準備します。

そして、母がこだわり続けたしょっぱいクレープ<ガレット>を作る為に、黒麦畑を探すのですが、そこで母の自分への本当の想いを知るのです。

頑固で厳しく、頑なに古いしきたりや言い伝えを守り続けた母でしたが、全てはジャンの為だったと知った時は、心が熱くなりました。

面白い短編集って、なかなか無いですよね。
短編って難しいと思います。
でも、森さんの短編集は外れがないです。

「別冊 図書館戦争Ⅱ/有川浩」

遂にシリーズ最終巻です。
早く読みたいような、読み終わりたくないような複雑な気持ちで読み始めました。

「もしもタイムマシンがあったら」は、緒形の若き日の恋愛について。
彼女の気持ちも分かるけど、やっぱり早く言わなくちゃと思いながら言えない事ってありますよね。
それが大事なことであればあるほど。
でも、ちゃんと二人の恋の行方も描かれていたので、ほっとしました。

「昔の話を聞かせて」は、郁が篤に「新米だった頃の話を聞きたい」と言って、篤と小牧の若かりし頃の失敗などが語られます。
郁に似た直情型の篤も格好良いです。
ハラハラしますけどね。

「背中合わせの二人」は、柴崎と手塚が主役です。
柴崎がやっかいなストーカーに付きまとわれ、それがきっかけで手塚との距離が少し縮まるのですが、その直後に新たなストーカーが現れ・・・。
最後の最後でひやひやさせますね~。

犯人の言ってる事もやってる事も全く理解出来ないのですが、こんな人いるんだろうな・・・と思うと怖くなります。

そのまま終わらなくて良かったですよ。
何か人の悪意に当てられて、重いものが残っちゃったかも。
有川さんのご主人のおかげですね。
素直になった柴崎がとっても可愛くて、幸せそうで、本当に良かったです。

いつか図書隊のその後の話も読みたいです。
郁達じゃなくて、次の世代が主役でも面白いかもしれません。

「天日坊」観劇

勘九郎さんが主演でクドカンと組むのは初めてですね。
勘九郎さんはどんどん存在感が大きくなって、この数年は心に響く芝居が多いです。
役者さんの成長を長い時間かけて見られるのは舞台ならではですね。

「天日坊」は最初から笑える場面がいっぱいで、楽しく話の筋に引き込まれていきます。
クドカンの脚本、本当に面白いです。

最初にお三婆さんを殺してしまう場面は、それまでが楽しいばかりだったので、逆に法策の孤独がぐっと心に染みました。

将軍頼朝の落胤になりすまし、旅の途中で出会った若者を殺し、悪事を重ねて行く法策。
盗賊・地雷太郎と妻のお六に出会って、法策の本当の素性が見抜かれるが・・・。

「俺は誰だ」とつぶやき続ける法策の姿が印象的でした。

トランペットの音色が物悲しくて、最後の立ち回りの場面では涙が出て来ました。

串田さんの演出もやっぱり面白いですね。
何だかコクーン歌舞伎は心が湧き立ちます。

もう一度観たいです。
いつか再演して欲しいなと思います。

「三匹のおっさん/有川浩」

還暦を過ぎても「おじいさん」と呼ばれたくない、まだ何か自分達にも何かできるのではないかと私設自警団を始めた三匹のおっさん。
定年退職後、ゲームセンターに再就職した剣道の達人キヨ、息子に居酒屋「酔いどれ鯨」を譲った柔道家シゲ、一人娘と二人暮らしの工場経営者で機械をいじらせたら無敵の頭脳派ノリ。
この三人にキヨの孫の祐希が絡んで、様々な事件を解決していきます。

とにかく登場人物のキャラクターが良いですね。
キヨの頼りない息子夫婦を反面教師にした孫の祐希は意外としっかり者で、最初はお互いに言葉が通じないような世代間の隔たりを感じていたのに、だんだんと心を通わせていく様子が微笑ましいです。
祐希のアドバイスで、キヨもおしゃれになったり。

祐希とノリの一人娘・早苗がお互いに好意を抱くようになるのですが、これも可愛らしいです。

町で起こる事件は、詐欺、痴漢、動物虐待、催眠商法等、身近に起こりそうな事件ばかり。
キヨとシゲの武術とノリの頭脳で解決していく様は見事で鮮やかです。
悪人は徹底的にやっつけ、被害者には温かい気遣いを忘れないのもいいところです。

続編が出たばかりなので、読むのが楽しみです。

「高き彼物」観劇

吉祥寺シアターは程良い大きさの劇場なのですが、役者さん達が大きな声で話す場面が多かったので、すごい迫力でした。

田中美里さんの声は独特ですが、好きな声だなーと思って聞いていました。
せわしなくあちこち動き回ったり、有無を言わせぬ怖い口調で命令したり、しっかり者の娘・智子を魅力的に演じていました。

石丸謙二郎さんや品川徹さんも味があって、好きな俳優さんです。

終盤は驚きの展開で、まだ呑み込めていません(笑)
でも、「高き彼物」って何かな・・・って、登場人物達と一緒にずっと考えていました。

昭和50年代の歌や茶の間のセットに置かれていた古い型のラジオやアイロン、黒電話が今はレトロに見えて懐かしかったです。

「高き彼物」HP

7月の気になる舞台(7/24追記)

今日は暑い一日でした。
梅雨明けはまだみたいですが、しばらくこの暑さは続きそうです。

さて、今月の気になる舞台です。

千に砕け散る空の星 ★(7/24追記)
文学座の中村彰男さんが出演されるので、観に行くことにしました。

リンダリンダ ★(7/10追記)
(ブルーハーツのファンだったわけではないけど、評判が良いみたいなので行って来ます。)

高き彼物」 ★
マキノノゾミさんの戯曲ということで、ちょっと観てみたいなと思ってチケットを入手しました。
吉祥寺シアターも好きな劇場です。

「天日坊」 ★
クドカン×勘九郎さんの顔合わせ、とても楽しみです。
串田和美さんの演出にもいつも驚かされますが、今回はどんな舞台になっているのでしょう。

温室
高橋一生さんは最近ドラマでも見かけるようになりましたね。

男の花道
福助さん×梅雀さん、渋くて素敵な共演ですね。

新・幕末純情伝
桐谷美鈴ちゃんの初舞台。
どんな風に化けるか、楽しみな女優さんです。

6月の観劇

だいぶ時間が経ってしまったのですが、6月に観劇した舞台の感想です。

「南部高速道路」
長塚圭史さん演出の舞台を観るのは久し振りでした。
ここ数年は何となく分かり易い作品を求めていたので、ちょっと敬遠していました。
この舞台もストーリーは現実と非現実が入り混じったような独特なものでしたが、そこで生まれる人間関係とかが面白かったです。
役者さん達は上手い人ばかりだったので、ちょっとした動きや表情でその場の空気が作られたり、壊れたり。
中央に舞台があったので、どの席から観てもいい感じでした。
微妙に客席に絡む場面もあり、私と友達は話しかけられて頷いたりして。
それも楽しかったです。
渋滞が動き出して現実に戻った時、みんな知らない他人のような顔になっていくのがちょっと寂しかったり、そんなものかもしれないと思ったりしました。

「藪原検校」
2007年の蜷川×古田版を観ていたのですが、あまり二度観たい作品ではないなと思いながら、萬斎さんがどう演じるのかが気になって観に行きました。

演出とキャストが違うとこうも変わるのか!と面白かったです。
特に浄瑠璃のパロディーを語る早物語の場面では、萬斎さんの多彩な才能に見とれるばかりでした。
他の座頭役のキャストの方達と音楽と演出が一つになって、素晴らしい場面でした。

語り手役の浅野さんがほとんど目をつぶっていたのにも驚きでした。
時々芝居に割り込みながらのユーモア溢れる語りは楽しかったです。

蜷川版では最後に藪原検校が死ぬ場面がリアルで、あまりに衝撃的だったので、その場面ばかりが記憶に残ってしまって、ユーモアのある場面は吹っ飛んでしまっていました。

今回は笑える場面もあの時代の盲人達の暮らしの辛さも両方味わって、考えさせられました。

「ユリゴコロ/沼田まほかる」

半年前に千絵を家族に紹介した時、父も母も弟もひと目で千絵を気に入ったようだった。あの時の僕は、幸せな末来に何の疑問も抱いていなかった。
しかし、ふた月も経たないうちに千絵が失踪し、父は末期のすい臓がんと診断され、母はあっけなく交通事故で命を落としてしまった。

ある日、僕は父の書斎で4冊のノートを見つけた。
そのノートの表紙には<ユリゴコロ>と書かれていた。
手記のような小説のような内容に、僕は引き寄せられていく。

主人公は次第に家族の隠された秘密に気付いていきます。
最初はノートの内容が薄気味悪く思えたのですが、読み進むうちに書き手の幸せが壊れていくのが可哀そうになってきます。

主人公が経営するドッグフィールド付きのお店のスタッフ・細谷さんのおかげで失踪した千絵の行方が分かって、そちらの話にも惹き込まれていきます。
お店での主人公はどこか頼りなくて、スタッフとのやり取りにちょっと心が和みます。

千絵にまつわる"ある事件"が落ち着いたところで、主人公は死期が近づいた父に呼び出されます。

最後は意外な結末で、涙が止まりませんでした。
読み始めた時は、まさかこの本で泣くとは思いませんでした。
うーん、不思議な読後感です。

違う作品も読んでみたいです。

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