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2011年10月

「純平、考え直せ/奥田英朗」

純平は新宿・歌舞伎町の六明会傘下の早田組の下っ端だ。兄貴分の北島に心酔し、いつか北島のような格好良いヤクザになりたいと思っている。ある日親分に呼ばれた純平は、敵対する組の幹部を射殺することを命じられる。

射殺を決行する日まで三日間、娑婆で心残りのないように過ごせと大金をもらった純平は、様々な人に出会います。
無銭飲食を繰り返す元大学教授のセンセイ、毎週末歌舞伎町で遊んでいるという派遣社員の加奈、同じ二十一歳のテキ屋の信也、深夜のコインランドリーで客を待つオカマのゴローなど。

加奈が純平のことを携帯の掲示板に書き込んだら、いろいろな人が好き勝手な意見を書きます。
純平を止めようとする人もいるのですが、純平はそれを読んでも腹を立てるばかり。
果たして純平は考え直すのか?

私の心に残ったのは、最後の方のセンセイの言葉です。
若いうちは今がすべてなんですよね。
これから先の長い人生で起こる様々な出来事を想像することが出来ないのです。

でも、大人だって同じかもしれないな。
少しだけ上手く自分の気持ちをごまかせるだけかもしれません。

純平がどうするのか気になって、一気に読んでしまいました。
続編が読みたいです。

「ストーリー・セラー/有川浩」

彼は、医師に妻が特殊な病にかかったことを宣告される。複雑な思考すればするほど寿命が縮まるというのだ。作家である彼女にとって、それは残酷な病だった-。

先が気になって、一気に読んでしまいました。
有川さんは読ませるのが上手いです。

ビジネス書を読む男の人は多いけど、小説を読む男の人って多くないと思うのですが、どうでしょう?
本が好きな女性なら、彼も本好きだったらいいなと思うと思うのです。
その点、この作品の彼はとても理想的です。
本好きで、作家である彼女の一番の読者なのです。
執筆活動の為には家事もしてくれるし。

ただせっかく彼が背中を押してくれて作家になったのに、作家になったことによって起こった不幸な出来事も多々あって。
有名税じゃないけど、作家も読者や家族の批評に傷つくことがあるんだろうなと思いました。
そして、心ない誹謗中傷をする人達もいるのでしょう。

この本はSide-AとSide-Bの2つの作品からなっていて、妻が作家で理解のある夫というのは同じ設定です。
どちらも中編で、物足りなさはあるけど、面白い試みです。

「シンデレラ・ティース/坂木司」

幼い頃に嫌や思いをして以来、歯医者が大嫌いなサキが、大学の夏休みのアルバイトで歯医者の受付をやることに。そこには様々な患者が来院して来るのだが・・・。

「ホテルジューシー」にも登場する、主人公・ヒロちゃんの親友のサキのお話。
私もサキと同じく歯医者は苦手ですが、こんな歯医者があったら是非通いたいです。
品川デンクタルクリニックの人達は、すごく患者さんの事を考えて治療しているのです。
歯医者の善し悪しって分からないですよね。
他の病気と違って(手術が必要な病気以外)、削ってしまったら元に戻らないし。

サキやクリニックの人達は、患者さんの不可思議な行動の謎も解いていきます。
美人の患者さんの彼氏が突然怒鳴りこんできた理由や、早く治療を終わらせて欲しいと突然怒り出したり、風邪を引いたサキに優しかったり、態度にムラのある患者さんの秘密など。

正義感が強くてしっかり者のヒロちゃんとは正反対だけど、だんだん成長していくサキ。
おっとりしたサキが、歯科技工士の四谷さんを好きになっていく姿も可愛らしいです。

サキをフォローしてくれるクリニックの同僚達もそれぞれ面白いキャラクターです。

「ツレがうつになりまして。」

「飛ぶ教室」観劇

キャラメルボックスの舞台を観るのはかなり久し振りでした。
一時期は上演される度に観ていたのですが、タイムスリップや幽霊の話にちょっと飽きてしまって、しばらく遠去かっていました。

今回はキャストもあまり知らなかったし、ケストナー原作のお話も新鮮でした。
ドイツの高等中学校の仲良し5人組が、他校の生徒との喧嘩や尊敬する先生との信頼関係などを通して成長していく物語です。

私自身は「親友」という言葉は気恥かしくて、言うのも言われるのも苦手ですが、学生時代の友達というのは特別ですよね。
自分の学生時代の事も思いだしながら、笑ったり、ジーンとしたり。
観終わった後は温かい気持ちになりました。
やっぱりキャラメルボックスっていいなって。

いつも感心するのですが、みんな歌も上手いですね~。
上演前の、お客様への注意事項を盛り込んだ歌も面白かったです。

「飛ぶ教室」HP

「さよならの扉/平安寿子」

ガンで余命半年と告知された夫・卓己から、愛人がいたことを知らされる仁恵。夫がいよいよ危篤で危ないという時、何故か仁恵は愛人・志生子に電話してしまう。卓己の葬式が終わってまもなく、仁恵は志生子に会いたいから線香をあげに来るようにと電話するのだが・・・。

卓己が亡くなっても実感が沸かず、どこかおっとりとしている仁恵が、志生子にだけはせっかちにぐいぐい自分の気持ちを押しつけるのがおかしいです。
同じ人を好きだったのだから自分の気持ちを分かってくれるはずというのは、分かるような分からないような。

愛人だったという負い目から仁恵に振り回される志生子ですが、何故か仁恵を迷惑と言いきれなかったりして。
仁恵の天然な子どもっぽさと明るさが、いつしか頑なな志生子の心を開かせていきます。

普通は亡くなった夫の愛人に会いたいと思わないだろうし、まして仲良くなりたいとは思わないと思います。
現実にはあり得ない話だと思いますが、この本の中ではこんな友情もありかもと思わせます。

でも、死ぬ前に愛人がいた事を告白する夫っていうのはどうでしょう。
そういう秘密は、墓場まで持って行って欲しいです。

「エレジー」観劇

偏屈で頑固な父・平吉。息子の草平がローンを支払うということで買った家だったが、草平は平吉の意にそぐわない嫁・塩子と共に出て行った。草平が急死したことから、塩子がローンの返済について平吉を訪ねて来て・・・。

この数年、平さんを舞台で観る時は時代物が多かったので、現代劇で観るのは初めてで新鮮でした。
最初の方は声を荒げる場面も多かったのですが、後半では包容力を感じるような寡黙さだったり、相手が憤るのを楽しげに見守ったり、偏屈だけれど憎めない平吉の存在感の大きさを感じさせる演技でした。

塩子を演じる山本さんは文学座の公演でも何度か観ていますが、感情の起伏が激しい塩子を全身で演じていて惹き込まれました。

他のキャストの方も上手い方ばかりなので、テンポが良くて、笑ってしまう会話も多く、あっという間の3時間弱でした。

清水邦夫さんの脚本は、やっぱり面白いなと思います。
人と人の関係が濃密に描かれているからでしょうか。

「アントキノイノチ」試写会

まだ十代である高校生の時に"死"と向き合うことになり、心身に傷を負った杏平とゆき。遺品整理という仕事を通して二人は出会い、少しずつ成長していくー。

榮倉奈々ちゃんは「余命一ヶ月の花嫁」の時も、演技ではなくてノンフィクションのような自然な表情で主人公に感情移入しやすかったのですが、今回もゆきの心の痛みや成長を一緒に感じられるような演技でした。

岡田くんも仕事に就いたばかりの戸惑いから、杏平の心境の変化を繊細な表情や仕草で表現していて良かったです。

遺品整理という仕事は、一人暮らしで家族とも疎遠な人が増えた現代ならではの仕事なんだろうなと思います。
何だか寂しいけれど、一人暮らしだと近所の人との付き合いもあまり無いですよね。
死後時間が経ってから発見された人の部屋、亡くなった人に対して複雑な思いを抱く遺族なども描かれていて、都会の孤独を感じました。

さだまさしさん原作の「解夏」「眉山」は好きな映画なのですが、原作は読んだことがないので読んでみたいなと思います。

「花婚式/藤堂志津子」

佐都子、39歳。優しくて、いつも自分の事を気遣ってくれる夫・草一郎との生活には何の不満も無く、幸せである。子どもが出来なかったのが唯一の心残りだが・・・。

夫の友人の結婚相手探しに協力したり、夫の後輩の離婚話に夫婦で奔走したり、「私には人の世話をするなんて向いてない」と言いながら、つい世話を焼いてしまう佐都子。
でも、佐都子も登場人物もみんな大人で、必要以上に詮索したり、助言したりはせず、最後は本人の選択に任せたりします。
私だったら、ついおせっかいが過ぎて、いろいろ言ってしまうかも。
今のアラフォーってこんなに大人ではないんじゃないかなって、ちょっと思いました。

最後の方は、佐都子が夫の後輩の子どもの面倒を見るようになるのですが、傍から見ると行き過ぎているのに、自分では気づかない事ってあるのですね。
自分の人生にとって一番大切な物は何か-佐都子と一緒に考えてしまいました。

すごくドラマティックな話というわけではないのですが、とても読みやすいし、佐都子がどうするのか気になって、一気に読んでしまいました。

「図書館戦争/有川浩」

昭和最終年、公序良俗に反する書籍・映像作品・音楽作品を任意で取り締まる権限を持った「メディア良化法」が成立・施行された。それに唯一対抗できる勢力として「図書館の自由法」が成立した。図書館はメディア良化委員会の検閲に対抗する為、警備隊を持つに至った。
郁は女性ながら図書隊の防衛員を希望し、堂上上官に厳しく指導され、訓練に明け暮れる毎日を送っていた-。

とにかく郁のキャラクターが良いですね。頭より体が動いてしまって、問題を起こしてしまったり、すぐに顔に出して怒ったり、泣いたり、喜怒哀楽が激しいところが。
読んでいて呆れながらも微笑ましくて、つい笑ったり、ハラハラしたり。

堂上も普段は厳しいのに、いざという時にはサッと郁を助けたり、かばってくれて頼もしいです。

二人の関係が続編でどう変わって行くのか、楽しみです。

「表現の自由」と法によるメディアの規制は度々問題になりますが、それも考えさせられる内容でした。
未成年の犯罪者が読んだ本やDVDが問題になる事も多々ありますよね。
でも、その本やDVDを読んだり、観たからといって、全ての人が犯罪者になるわけではないし、何を持って規制するかは難しいところです。

話し言葉の書き方も独特で、時々読みづらかったですが、郁の勢いが感じられて面白かったです。

「引き際」観劇

月船さららさんが主宰する演劇ユニット"metro"の公演です。
出演者の皆さん、強烈な存在感があって、濃~い2時間でした。

地震や原発の話から、日本が鎖国して・・・という「現在」ならではの作品です。
何か大きな出来事があって、それをダイレクトに作品に反映させてすぐに上演するって、ライブ感があって、これこそ演劇って感じですね。

村上淳さんに惹かれて観に行ったのですが、渋くて、格好良かったです。
脱いだり、歌ったりも素敵でした(笑)

宝塚の方はあまり知らないので、月船さんの舞台も初めて観ましたが、やっぱり主役オーラありますね~。目ヂカラがあって、色っぽかったです。
歌も良かったです。また聴いてみたいです。
終演後、カウンターの中の方に「この公演のチラシはありませんか?」と、聞いた相手はよく見たら月船さんで、びっくりするやら、ドキドキするやら。(目が悪くて、最初気づきませんでした。)
「すみません、切らしていて」と謝られて、恐縮してしまいました。

お勧めの舞台です。
"metro"HP

「オーデュボンの祈り」観劇

原作を読んだばかりなので、自分の頭の中だけで想像していた世界がどんな風に現れるのか楽しみにしていました。
舞台って、演出で本当に変わりますよね。
今回はスクリーンや布を使った演出が効果的で、面白かったです。
案山子の優午が筒井さんなのがまたぴったりで、彼が出て来ると何だか安心してしまいました。

河原さんもまさしく日比野だ~!と思いました。

伊藤の描き方はちょっとイメージと違ったのですが、吉沢さんは島で起こる出来事に巻き込まれながら、真相に近づいていく伊藤を表情豊かに演じていました。

すごく残念だったのは、城山が騒々しい男になっていたことです。
あれでは桜と同じ種類の人間でありながら、違う方向に行ってしまったという対比にならないです。

でも、舞台には舞台の中の「荻島」がちゃんと出来ていました。
時が経つのを忘れて、一幕はあっという間に終わっていました。
二幕もたくさんの事件をよくまとめて描かれていたなと思います。
原作ファンの方にもお勧めの舞台です。

世田谷パブリックシアターHP

「モップの精は深夜に現れる/近藤史恵」

「天使はモップを持って」シリーズの第二弾。清掃作業員のキリコちゃんが、オフィスで起きる事件や謎を解いていきます。キリコちゃんは清掃作業員らしからぬおしゃれな服装で、可愛くて、掃除の腕前は超一流。オフィスで起こった事件で悩む人々にも親身になって考えてあげます。

前作でプライベートに変化のあったキリコちゃんですが、それにまつわるお話は最後に書かれています。

各話の主人公に共通するのは、ちょっと自分に自信の無い人達であること。それが、キリコちゃんのアドバイスやオフィスでの悩みや事件が解決したことで、ちょっと変わって行くのです。それが"天使"なんですね。

オーデュボンに続き、またしても二段組でしたが、読みやすかったです。
続きも読みたいです。

「オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎」

目が覚めると、そこは「荻島」という見知らぬ島だった。コンビニ強盗に失敗した伊藤は、警察官となった同級生・城山に逮捕されたのだが、パトカーから逃げ出したことを思い出す。

江戸時代から「閉鎖」しているという島で唯一外との行き来をする轟、轟に言われたからと島を案内してくれる日比野、「反対」のことしか言わない画家・園山、島の住民から殺人を認められている桜、そして未来を予言できるとみんなに頼りにされている喋る案山子・優午。伊藤が島に来た翌日、優午はバラバラにされ、壊されてしまう。優午が殺されたのだ。
犯人は果たして誰なのか。

これがデビュー作だなんて、すごいです。
分厚い本ですが、二段組です。
でも、先が気になって、思ったより早く読んでしまいました。

面白い設定ですが、喋る案山子はあまりイメージ出来なかったです。
悪意の塊みたいな城山がとても怖くて、現実にはこんな人絶対いて欲しくないです。
桜との対比が面白いです。
伊坂さんの作品には、たびたび伊藤のような巻き込まれ型の主人公が出て来ますが、それがまた魅力的だったりします。
ヒーロー然としたヒーローではないので、逆に共感できるというか。

以前から読んでみたいなとは思っていたのですが、この作品の舞台を観に行くことになって、先に読んでみました。
映像や舞台を先に観ると、自分の想像だけで本が読めなくなってしまうので。
これをどう舞台化するのか楽しみです。

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